内戦が続く中央アフリカ共和国の首都バンギで、避難民の安全な避難所だったファティマの聖母教会に28日、武装集団が手りゅう弾を投げて発砲した。これによって少なくとも17人が死亡し、27人が行方不明となっている。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などによると、死亡した人たちの中には、同教会のポール・エミレ・ンザレ司祭(76)と2人の子ども、2人の大人が含まれているという。行方不明の非戦闘員は、襲撃した集団によってさらわれ、どこに連れ去られたのかは不明だという。
これを受けて、UNHCRのファトウマタ・レジューン・カバ報道官は30日、ジュネーブで行われた記者会見で、「UNHCRは罪のない非戦闘員に対するこの攻撃を強く非難する」と述べた。
襲撃時、同教会には9千人の国内避難民が収容されていた。このうち2500人は近隣地域で悪化する治安から逃げて1週間前に移動してきたばかりだったという。他の人たちは、昨年12月から滞在していた。
同教会は現在、誰もいない状態で、襲撃を逃れた人たちは周辺地域やバンボなどの隣接地域、約10カ所に移動した。
「多くの人たちは何も持たずに逃げ、お金も食料も寝るための敷布団も持っていない。他の人たちは銃弾による傷を負っており、緊急に看護が必要だ」とファトウマタ・レジューン報道官は述べた。「彼らの苦難に加えて、彼らが移動し過度に混雑した避難民の場所は、水や食料、避難所や基本的な医療の不足に直面している」という。
UNHCRによると、最近まで教会や修道院、イスラム教寺院は、同国の避難民にとって安全な避難所となっていた。バンギにある43カ所の国内避難所のうち32カ所が宗教施設だという。
AP通信などによると、同教会への襲撃を受けて、それをイスラム教徒による仕業だとみなした一部のキリスト教青年グループがその襲撃に抗議し、29日、バンギにあるイスラム教寺院を破壊したという。これによって11人が死亡した。
しかし、バンギにあるイスラム教共同体の代表者であるオウスマネ・アバカル氏は、ファティマの聖母教会への襲撃を非難するとともに、それが地元のイスラム教徒たちのせいだとする見方を否定した。
国連人道問題事務所(OCHA)は、「いま中央アフリカ共和国で起こっている人道危機は確かに大変深刻で、『宗教紛争』として報じられていることが多いようです。しかし現実はもっと複雑」だとしている。
国連児童基金(UNICEF)の日本委員会である日本ユニセフ協会や、キリスト教精神に基づいて飢餓や貧困の問題に取り組んでいる日本国際飢餓対策機構は、同国の内戦で住む場所を追われた人たちのために、支援を呼びかけている。