西アフリカのナイジェリア北部を主要活動地域とするイスラム教スンニ派過激組織「ボコ・ハラム」が、同国北東部ボルノ州チボクにある学校で200人を超える少女たちを拉致し、5日、外国のメディアを通じて犯行声明を出した。動画で出された犯行声明では、同組織の指導者アブバカル・シェカウを名乗る人物が「女子生徒たちは学校をやめて結婚するべきだ」と主張、「彼女たちを市場で売り飛ばす」などと表明したことで、国内外で非難が巻き起こっている。
この人物は、「この戦争はキリスト教徒に対するものだ」としているが、ナイジェリア・キリスト教協会(CAN)の関連組織である北部州キリスト者・長老フォーラム(NOSCEF)と、ナイジェリアのイスラム教徒の組織であるナイジェリア・イスラム最高評議会(NSCIA)は、ボコ・ハラムを非難している。
ボコ・ハラムはナイジェリア政府の打倒や西洋式教育の否定などを掲げている。ユーチューブに掲載された動画で、この人物は、「(世界の)どの地域のどの国もいまなすべき決断がある。我々、つまり確固たる歩みを進めている真のイスラム教徒たちの味方をするか、それともオバマ(米大統領)やフランソワ・オランド(仏大統領)、ジョージ・ブッシュ(米元大統領)の側につくかだ」と英語で演説した。
これは、2001年9月21日に当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領が、9月11日の同時多発テロの後、米議会での演説で「(世界の)どの地域のどの国もいまなすべき決断がある。我々の味方をするか、それともテロリストの側につくかだ」と訴えたのを逆手にとったものと思われる。
動画の人物は、ブッシュ元米大統領やクリントン元米大統領、潘基文(バン・キムン)国連事務総長を名指しし、「その他いかなる不信仰な者」も殺すと叫んだ上で、「この戦争はキリスト教徒たちに対するものだ。つまり、キリスト教徒たち全般だ」と付け加えた。
ナイジェリアの英字紙「ザ・ネーション」電子版は、NOSCEFが4日に発表した声明文を引用し、拉致された少女たちのうち180人の名前を公表したが、それらはキリスト教徒の少女たちだけで、他はすぐにはわからなかったという。拉致された少女たちの人数は300人近いという報道もある。
NOSCEFは同声明文で、「チボクの地方自治体は90パーセントがキリスト教徒である。拉致された少女たちの大多数はキリスト教徒だ」と述べているという。その上で、「ナイジェリアの教会はこれによって嘆きの祈りへと招かれている」としている。
NOSCEFはその一方で、4日、フェイスブックで声明文を発表。「NOSCEFは我が国の治安当局、連邦政府、そして州政府に対し、我が国の首都の安全を確保し、北東部で脅威にさらされている市民を守り、これを最後にボコ・ハラムのテロによる支配を終わらせるよう、迅速な行動を要求する」と述べた。
「しかし、私たちはまた仲間のナイジェリア人たちに自分たちの役割を果たすことも求めている」とNOSCEFは同声明文に記した。「私たちは全てのナイジェリア人たちに対し、国会期間中にツイート(つぶやき)をしたり投稿することで声を上げるようにという私たちの呼びかけに加わるよう促している」
「共に力を合わせれば、私たちはテロリズムを打ち負かすことができる」と、同声明文は結んだ。
一方、NSCIAは4月16日、英文公式ウェブページで少女たちの拉致を非難する声明文を発表し、「ナイジェリア・イスラム最高評議会はこの残酷で野蛮な行為を最も強い言葉で非難するとともに、関係当局に対し、あらゆる必要な努力を行ってこれらの無実な少女たちを解放し、彼女たちが勉強を続けるようにすることを求める」と述べた。
また、5月7日にNSCIA は「ボコ・ハラムの活動に対する神の介入を求めて、1カ月の断食と祈りに加わるようイスラム教徒たちに呼びかけた」と、ナイジェリアの英文ニュースサイト「インフォメーション・ナイジェリア」が報じた。
なお、インフォメーション・ナイジェリアが4月20日に報じたところによると、同評議会はキリスト教の復活祭にあたって、ナイジェリアのイスラム教徒とキリスト教徒の平和的共存を維持する必要性を改めて求めたという。
一方、世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事は、ナイジェリアのグッドラック・ジョナサン大統領に宛てた5日付の書簡で、女子生徒たちを自宅に取り戻すための「迅速かつ平和的な」行動を促した。