結婚旅行は、2人が最初にデートした奈良公園だった。結婚式に出席した彼女の母や姉、妹も一緒だった。生駒から電車で15分、たった3時間だけという、おそらく最短距離、最短時間の記録的結婚旅行だった。
新居はクート師の好意で、学院の教師ホームが提供された。愛児園の母親たちが結婚祝いに電器釜とトースターをくれた。私が持っていたフライパンには穴が開いていて、油を入れて火にかけたら燃え上がり、家内はびっくりのスタートだった。唯一のごちそうは、市場で10円で売っていた鶏の皮の親子丼。おかげで鶏肉は、食べたいとも思わなくなってしまった。
聖書には、「ふたりはひとりよりもまさっている。ふたりが苦労すれば、良い報いがあるからだ。どちらかが倒れるとき、ひとりがその仲間を起す。・・・また、ふたりがいっしょに寝ると暖かいが、ひとりでは、どうして暖かくなろう。もしひとりなら、打ち負かされても、ふたりなら立ち向かえる。三つ撚りの糸は簡単に切れない」(伝道4:9‐12)とある。私は結婚して、このことを実感した。またやっと布団の上に寝ることができる身分になったことも感謝である。
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榮義之(さかえ・よしゆき)
1941年鹿児島県西之表市(種子島)生まれ。生駒聖書学院院長。現在、35年以上続いている朝日放送のラジオ番組「希望の声」(1008khz、毎週水曜日朝4:35放送)、8つの教会の主任牧師、アフリカ・ケニアでの孤児支援など幅広い宣教活動を展開している。
このコラムで紹介する著書『天の虫けら』(マルコーシュ・パブリケーション)は、98年に出版された同師の自叙伝。高校生で洗礼を受けてから世界宣教に至るまでの、自身の信仰の歩みを振り返る。