日本カトリック正義と平和協議会(勝谷太治会長)は2日、山崎敏充・東京高等裁判所長官宛に、静岡地方裁判所の袴田巖氏の再審開始決定に対する、静岡地方検察庁の即時抗告を棄却するよう、要望書を提出した。全文は次の通り。
袴田 巖さんの再審開始決定に対する即時抗告を棄却してください
3月27日、静岡地方裁判所は、1966年に起きた一家4人殺害の犯人として死刑が確定した袴田巖さんに対する再審開始、刑の執行と拘置の停止、釈放を認める決定を下しました。静岡地方検察庁は同日、拘置停止を取り消すよう、通常抗告を行いましたが、翌日、東京高等裁判所はこれを棄却されました。わたしたち日本カトリック正義と平和協議会は、静岡地方裁判所村山浩昭裁判長の勇気ある決定と、東京高等裁判所の抗告棄却の判断に、心から賛同の意を表し、御礼を申し上げます。
しかし、3月31日、静岡地方検察庁は袴田 巌さんの再審開始決定についても異議をとなえ、即時抗告を行いました。東京高等裁判所におかれましては、どうか、本抗告に関しても、棄却とされますよう、お願い申し上げます。
日本カトリック正義と平和協議会は、これまで一貫して袴田巖さんの死刑判決に抗議し、再審を求めてまいりました。今回の決定にもあるように、袴田さんを有罪とするために検察が提出した5点の衣類等の証拠品の信憑性は、DNA鑑定などから覆されています。袴田さん本人の自白に関しても、取り調べは約20日にもわたり、連日平均12時間もなされたといいます。日本国憲法第38条は「強制、拷問、脅迫による自白は証拠にできない」「自白だけでは有罪判決を出せない」としています。袴田さんにたいする拘置停止は当然であり、再審の必要は明らかです。静岡地方検察庁は、今回の決定に異議があるのなら、証拠品の信憑性をあらためて証明するべきです。
48年間もの拘禁生活で、袴田さんは心身をひどく苛まれ、自分が釈放されたことさえ、はっきりとした実感を持って捉えられないほど、衰弱してしまいました。もしふたたび拘置されることになれば、袴田さんの心身は決定的に破壊されてしまうでしょう。
静岡地方裁判所が発表した決定骨子の中で、村山浩昭裁判長は、「拘置をこれ以上継続することは、耐え難いほど正義に反する状況にあると言わざるを得ない」と、深く心に刻まずにはいられない義憤のことばを述べています。日本の司法制度が正義に反することが決してありませんように。ひとりの人間の尊厳を損なうことが決してありませんように。即時抗告の棄却を、何とぞお願い申し上げます。