[1]序
今回は、ダニエル書8章に入ります。
1節の前半に、「ペルシャツァル王の治世の第三年」とあるように、7章1節の「バビロンの王ペルシャツァルの元年」から2年後のこととして記されています。この間の時の流れを注意したいのです。
さらに1節後半には、「初めに私に幻が現れて後、私、ダニエルにまた、一つの幻が現れた」と、7章の幻との関連で8章の幻を記録しています。
8章でも、1節から14節では幻の内容そのもの、15節から27節では幻の解釈が与えられています。前半は、さらに1節から4節と5節から14節に分けることができます。
[2]「一頭の雄羊」(1~4節)
「あなたが見た雄羊の持つあの二本の角は、メディヤとペルシヤの王である」(20節)
(1)1、2節
時と場所、「シュシャンの城」。バビロンの都、政治的葛藤の場である宮廷にあって、ダニエルはこの幻を通して、もう一つの視点を持つよう導かれています。
(2)一頭の雄羊の幻とその中心(3、4節)
「それは思いのままにふるまって、高ぶっていた」(4節)。8節、22節参照。国家が持つ危険性の一つ。
[3]「一頭の雄やぎ」(5~14節)
「毛深い雄やぎはギリシヤの王であって」(21節)
(1)「雄やぎは雄羊を地に打ち倒し」(5~8節前半)
アレクサンドロス大王(在位紀元前356~323年)によるペルシャに対する勝利。
(2)「あの大きな角が折れた」(8節)
アレクサンドロス大王は32歳にして、熱病のため突然の死。
(3)「また一本の小さな角」(9~12節)
シリヤのセレウコス王朝第8代の王アンティオコス・エピファネス(在位紀元前175~164年)を指すと考えられます。
①「常供のささげ物は取り上げられ」(11節)
②「その聖所の基はくつがえされる」(11節)
③「その角は真理を地に投げ捨て」(12節)
[4]結び
(1)ダニエルが年月の流れの中で「また、一つの幻」と教えられ続けている姿を見ます。時間をかけて全ての面において成長させてくださる主なる神の恵みを教えられます。
(2)ダニエルが、「その後、起きて王の事務をとった」(27節)と、その時点ですべてを完全には悟り得ない中にあっても、成長させてくださる神の恵みに答えて日常生活での義務をはたし続けている姿に習い、私たちもそれぞれの場で役割を果たしつつ前進。
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宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。