南アフリカ人種隔離(アパルトヘイト)政策反対運動を率いてきたネルソン・マンデラへの賛辞を行ったオバマ米大統領について、米キリスト教指導者らの間で、「オバマ米大統領は自身の政治的主張のためにネルソン・マンデラの活動を利用しているのではないか」との批難の声が聞かれている。12日、米クリスチャンポスト(CP)紙が報じた。
米キリスト教保守派団体「アメリカを憂慮する女性の会(CWA)ベヴァリー・ラヘイ研究所でシニア・フェローを務めるジャニス・クラウス氏は米CPの取材に対し「大統領は一致よりも分裂を促進しようとしています。外国の指導者を賛辞することを、自身の政治問題解決促進のために利用しています。すべてオバマ米大統領自身の政治的立場のプロモーションのためにネルソン・マンデラの活動を利用しています。アメリカ国民はワシントンにいるすべての人たち、すべての事柄に対して聞くことにうんざりしています。オバマ米大統領はいつも自身の政治的立場のプロモーションのことしか話しません」と伝えた。
10日、南アフリカヨハネスブルグで演説を行ったオバマ米大統領は、ネルソン・マンデラ元同国大統領の功績を賛辞するとともに、政治的問題についても言及し、「人種差別問題で和解に導いたマンデラ氏のご活躍を快く受け入れるたくさんの人々がいる中、高まる不平等や慢性的な貧困問題に対する対策については少しの改革でも感情的な抵抗が生じている」と述べていた。
これについてクラウス氏は「もし誰かが貧困問題や不平等の問題に関して、オバマ米大統領と異なる見解を提唱したとしたらどうなるでしょうか」と疑問を呈し、オバマ米大統領の発言はすべてのオバマ米大統領の政治的意見に反する人たちに対する侮辱であると批難した。
米家族研究評議会(FRC)はオバマ米大統領の政治的意図に関するコメントを控えたものの、シニア・フェローのケン・ブラックウェル氏は「過去の経験がなんらかの示唆を呈するものであれば、オバマ米大統領は、ロナルド・レーガンでもネルソン・マンデラでも、あるいはマーガレット・サッチャーでも彼の政治的課題解決の役に立つ人物を例に出すことができるでしょう」とし、オバマ米大統領の演説について「今日の世界中各地において、人々はそれぞれの政治的信条の枠組みにとらわれたままになっています」と伝えた。
ブラックウェル氏は「もしネルソン・マンデラの活動を同姓婚承認のための政治政策に使おうとするのならば、無謀であるといわざるを得ません。なぜならそれは(信仰者である)マンデラ氏を侮辱することになるからです。私たち人間の良心は政府から与えられたものではなく、神から与えられた賜物です。マンデラの生涯はどんな圧政下にあったとしても、それが神の与えたもうた個人の良心を切り離すことにはつながらないことが示されました。個人の良心の責任はただその創造主に対して存在するのであって、いかなる政府のためでもないからです」と伝えた。
ブラックウェル氏はオバマ米大統領に対してネルソン・マンデラの生き方の中核となる教えを見逃すことのないように注意する必要があるとし、「その点において、オバマ米大統領が神を政府の権限拡大のために置き換えるような愚行に走らないように期待する」と伝えた。
法と正義のための米センター(ACLJ)シニア・カウンセルのデーヴィッド・フレンチ氏は、「確かに政治問題や、それに向けて努力した事柄について、過去の偉人の業績と結びつけて訴えようとする傾向がある」と注意を促した。
また昨今の社会問題について同氏は「複雑で困難な経済的、文化的諸課題がある中にあって、私たちはすでに逝去した偉人たちの考えの延長線上に立っているという仮定なしに、過去の業績を認識できるでしょうか。ネルソン・マンデラは偉大な人物でした。しかし政治家は決して偉大な人物の遺産を特定の政治政策達成のために利用しようとしないように最大限の注意を払うべきです」と伝えた。