人の子はまず、多くの苦しみを受け
ルカの福音書17章20~37節
[1]序
今回は、ルカの福音書17章22節から37節の記事を中心に味わいます。
直前の20節と21節では、パリサイ人たちの質問に主イエスは、「神の国は、あなたがたのただ中にあるのです」(21節)と答えておられました。この箇所では、「弟子たちに」(22節)、「人の子の日」(主イエスの再臨)をめぐり語られています。
[2]人の子の日(主イエスの再臨)をめぐり注意すべき点
(1)主イエスの再臨までに待ち望みの期間があることについて
「見られない時が来ます」(22節)と。この期間があることを無視して、日常生活を軽んじる問題(Ⅱテサロニケ2章2節以下、3章6節以下)。
(2)「こちらだ」、「あちらだ」との主張に影響されないように
主イエスの再臨は、ひそかなことではなく、誰も否定できない公の姿で(24節、Ⅰテサロニケ4章16節)。
(3)人の子の日(主イエスの再臨)を迎えるまでの期間の一つの特徴
「しかし、人の子はまず、多くの苦しみを受け、この時代に捨てられなければなりません」(25節)。
[3]人の子の日(主イエスの再臨)に対する備え
人の子の日(主イエスの再臨)に対する備え、姿勢を抜きに、人の子の日(主イエスの再臨)について語られていない。
(1)ノア(創世記7章11節以下)やロトの時代(創世記18章20節以下)のように、警告を無視し、救いのメッセージに耳を傾けないことがないように。ノアやロトと同様、主なる神への忠実と約束の待望。
(2)後ろを振り向き、元へ引き返すことがないように(31、32節、創世記19章26節)。
(3)富にしばられないように(31、33節)。
(4)備えと努力の積み重ね(14章26~35節)。
[4]結び
神の国についての二つの面。
①主イエスにおいて、すでに到来している恵みとして、「あなたがたのただ中にある」(21節)と言われる面。
②やがてかならず主イエスの再臨において完成する、それを目指して進む面。
この二つの面の両方を受け止め進むべき姿勢を教えられます。
(1)前回教えられた、すでに与えられている神の恵みに感謝して。
(2)やがて必ず完成する神の国の約束に立ち、日常生活における備え。主イエスの苦しみと栄光(24章26節)と主イエスの再臨を待ち望む者の苦しみ、18章1節以下。
宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。