かつては何万人ものキリスト教徒がいた京都を知ってもらおうと、京都のキリシタン史跡を紹介する初めての本「京のキリシタン史跡を巡る―風は都から」(三学出版刊、1260円)が先月、出版された。初版として3千部が印刷されたが、すでにほぼ完売状態。販売後約1ヶ月で次版の話が持ち上がっている。
著者は、日本バプテスト連盟・京都洛西バプテスト教会の杉野榮師(3月で主任牧師を引退)。京都で多くの殉教者を出したキリスト教徒の歴史を、ほとんどの人が知らないということから、約10年前に同書の出版を考え始めた。約3年前に大病を患った際、大きな手術を受け闘病を続ける中、「苦しみを喜びとして受け入れ、恨むことなく殉教していった人々の話が人事ではない」と思い、本格的に出版に向けて活動を始めた。
各史跡の写真は、キリスト教文化資料館でボランティア活動をしているカトリック河原町教会信徒の嶋崎賢児さんが撮影。嶋崎さんの家系は約400年前からのカトリック教徒。今年、列福が決まった日本の殉教者188人の内、京都の大殉教について、約10年前にバチカンへ証言をした数少ない人でもある。
同書では、洛中、北大路、東山・鴨川、洛西、京都周辺に分けて約40ヶ所の史跡が写真と共に紹介されている。杉野師は、「ほとんどの人が京都のキリシタン殉教について知らない。教会のなかでも同じで、これは伝道以前の問題がある」と語り、京都の殉教者を広く知ってもらうため「どうしても、一般の人に読んでもらえるようなものを書きたかった」と語る。
また、嶋崎さんは、「京都は寺が多く、寺を紹介する本は多い。しかし、キリシタンに関して紹介するものは出ていない。京都に何万人ものキリシタンがいたというのを知ってもらいたい」と語っている。