【CJC=東京】ギリシャ北部のフィリピ近郊で聖書を個別に配布していた57人が7月27日、警察に逮捕された。配布していたのは「オペレーション・ジョシュア」という聖書配布組織。今回の配布には25カ国からボランティア400人近くが参加していた。
米国の宣教専門ANS通信によると、聖書個別配布は、ギリシャではそれほど見慣れた光景ではない。そこへ現地では支配的な正教会司祭が配布阻止に立ち上がったことが今回の逮捕につながった。その理由というのは、配布される聖書が現代ギリシャ語だったからだそうだ。
新約聖書はギリシャ語で書かれたとはいえ、ギリシャ人で1冊でも所有している人は少なく、読んだことがあるとなると、さらに数が絞られる。それは聖書に記されているギリシャ語が昔のもので、現代ギリシャ人のほとんどには理解出来ないからでもある。聖書は司祭、神学者たちだけが理解し解説すれば良いというのが一般的な考えだ。
ただギリシャにも「聖書協会」があり聖書を刊行している。中には国教会が承認した現代語訳もある。協会理事には有力主教3人が就任しており、他の理事も国教会の会員だ。「ヘレニック宣教団」が今回の「オペレーション・ジョシュア」で配布したのも現代語訳。世界正教会の中で総主教4人が現代語訳を推奨している。
配布される袋の中には、本格装の新約聖書と音声版、ギャンブル人生から福音のメッセージによって生き方を変えられたあるギリシャ人の個人史、聖書の教えと歴史的教会諸信条の教えを守っているキリスト教団体であるとする声明も入れられている。聖書を読み、地域の教会に出席するようにとの「お勧め」もある。
それなら、このような計画は聖書の真理に従おうとする教会や団体から歓迎されるだろうに、と思われるが、実際はそうならなかった。一般市民や教会指導者から反対されるのは、「ヘレニック宣教団」が分派でありカルトと目されているからだ。
司祭の中には、ボランティアからもらった聖書を焼き捨てるように指示する人もいる。「異端が配布したものなら聖書ではあり得ない」と言う。法的に訴え、必要なら実力を行使する、と脅しの声を上げた司祭も出てきた。
「ヘレニック宣教団」会長のヨナタン・マクリス主教(アンティモス)は「ギリシャ正教会司祭が全て完全に敵対的というわけではない。中にはもらった聖書を読むように薦めている人もいる」として、ギリシャが抱えている問題は、経済的なものというよりは、聖霊を顧みなくなったことだ、と指摘している。