【CJC=東京】ニューヨーク大司教のティモシー・マイケル・ドーラン枢機卿が2007年、ミルウォーキー大司教時代に教区通常会計から約5700万ドル(約57億円)をセメトリー・トラスト・ファンドに寄託していた。ミルウォーキー教区が6000ページにも及ぶ関係文書を発表した、とニューヨーク・タイムズ紙が7月1日報じた。聖職者による性的虐待の被害者からの訴訟に備え、教区資産の一部を隠匿したものと見られる。
ドーラン氏は同日声明で隠匿について「古くさく、取るに足らない批判」と強調した。ただ文書にはドーラン氏がバチカン(ローマ教皇庁)に2007年送った書簡も含まれている。書簡では資産移転を「訴訟や債務から資産を保護するため」と事情を説明しており、バチカンの承認も速かったことも示されている。
ミルウォーキー教区のジェローム・E・リステッキ現大司教は、教区の信徒に、文書が信仰を揺さぶるかも知れない、と警告し、被害者に謝罪すると同時に教会指導者の行動について説明している。
ドーラン氏自身が虐待に直接関係してはいないものの、批判から教会を、特にミルウォーキー大司教としての在任中に守るため助力したのではと流されていた噂を裏付けることとなった。米司教協議会会長で次期教皇候補に擬せられたほどの同氏、米国教会の混迷を改めて浮き彫りにした形だ。