あなたの敵を愛しなさい
ルカの福音書6章27~38節
[1]序
6章26節までと6章27節以下の結び付き。27節の「しかし」(対比、「哀れ」でなく、「幸い」。それは、主イエスのみことばに聞き従うことにより)に注意。また「いま聞いているあなたがたに」、参照、20節の「あなたがた」←→マタイ5章4節。「あなたがた」の一番大切な特徴は、主イエスのみことばに聞き従うこと。
[2]「あなたの敵を愛しなさい」
(1)「あなたの敵を愛しなさい」は、6章27~38節の箇所の中心、少なくとも一番有名なことば。
①私自身の経験。記憶に残る最初の聖書のことばとの出会い。小学校5年生のとき、同じクラスの伊藤彰夫君の紙芝居の題名。
②27節の「あなたの敵を愛しなさい」と共に、35節で「ただ、自分の敵を愛しなさい」と繰り返し強調。28節以下は、敵を愛することについての説明。
(2)「愛しなさい」と命令
主イエスの命令。聖書の命令をどのように受け止めるかは、聖書とは何かに深く関係してきます。
①命令形。好き嫌い、受け取る側の事情、都合などが中心ではない。マタイ15章21~28節のカナンの女の態度。母親として娘のためには。主イエスこそ、唯一の救い。言い訳をしない。主イエスのことばに聞き従うこと。
参照、ヘブル4章2節、聞いたことが信仰と結び、従順。これは聖霊ご自身の働き。
②この命令形は、現在形。「愛し続けなさい」。一時的でない。「もうだめだ」、「もう十分だ」の道ではなく。
③命令は、神と人との契約関係の間でのこと。絶対の重みを持つ。主なる神は、可能なことを命じられる。神の備え、Ⅰコリント10章13節。神のことばに対する従順と信頼。
(3)28節以下、敵を愛しなさいの説明
①28節の「祝福しなさい」。ことばは普通無力に思われる。しかし人の人に対することばさえ力を持つ、創世記27章33節参照。何もできないように見え、そのように思われる年老いた時も、人を祝福する大きな働き。いや老いを待つのでなく、今から。祝福のことばを語り続ける生き方。
②「祈りなさい」。人の神に対することばはなおさら。主イエスご自身の模範(12節)に従い。
[3]少なくとも二つのこと
(1)31節、「自分にしてもらいたいと望むとおり、人にもそのようにしなさい」。
(2)36節! 主イエスにあっての期待。創世記1章27節、人間・私とは。
これに対して進化論、天皇制を柱とする教育は、人間を単なる動物と見るか、逆に人間を神とする。教育の根底は人間観、さらに神観。マタイ5章48節!
[4]結び
(1)主イエスが命令を与えるとき、ご自身がそのことを実践。
(2)パウロに対して、ロマ5章1~11節、Ⅰテモテ1章15節。パウロ自身神に敵対する自分が神に愛されている事実を知った経験から。
(3)エルサレムに対して。19章41節、23章34節、24章47節。主イエスの十字架は、ほかならないエルサレルにおいて。そのエルサレルに対する深い愛。福音はそのエルサレルから全世界へと。
宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。