12使徒
ルカの福音書6章12節~19節
[1]序
今回もルカの福音書(6章12~19節)を読み進めていきます。主イエスに対して宗教指導者たちが激しい反対をなす中で、主イエスご自身が祈りつつ多くの弟子たちの中から十二使徒を選ぶ記事です。
[2]主イエスの祈りの中で
(1)これまでもルカは、主イエスの祈りについて記してきました(4章42節、5章16節)。12節に、「イエスは祈るために山に行き、神に祈りながら夜を明かされた」とあり、父なる神の導きを求めつつ十二使徒を選ぶことがいかに重大な決断であるか示しています。
ペテロ、アンデレ、ヤコブ、ヨハネ(5章10、11節)やレビ(マタイ)の場合に見るように主イエスは準備をすでに進めてこられました。ここでは父なる神の導きにより十二使徒の選びを熱心に求めておられます。十二使徒の選出は決して衝動的になされたりはしないのです。
(2)「使徒」とは、特定の使命をもって派遣される者であり、派遣した人と同様に見られていました。十二使徒は、ローマに対し強硬な態度を主張する熱心党に属したシモンの例が示すように、多様な人々を含み、皆一方的な恩恵の故に選ばれたのです(ヨハネ15章16節)。
「使徒」と選ばれるのは、地上でのイエスの歩みを共にし、主イエスの言動の証人たち(使徒1章21~26節、10章39節、13章31節)。また復活された主イエスにより宣教の使命を委託された人々です(24:48、使徒13:31)。
[3]多くの弟子たちの群れや大ぜいの民衆(17~19節)
(1)この箇所の役割
20節以下に見る主イエスの教えがどのような場所、状況でなされたかを示しています。選ばれた使徒たちをはじめ、大勢の弟子たちやおびただしい民衆を相手に主イエスは教えられたのです。
(2)地理的記載
「ユダヤ全土、エルサレム、さてはツロやシドンの海べから」(4章14、37節、5章17節)。主イエスの宣教の広がり。
(3)主イエスの教えとわざ
18、19節。
[4]結び
(1)主イエスは使徒となるべき人々を召しだし、備え訓練し派遣。
(2)主イエスご自身選びをなす際、このように熱心に祈りつつ慎重になされています。私たちにはもっとその必要があり、衝動的にことを進めていくことを避けるべきと教えられます。
(3)ユダについて。選ばれた者が自己満足しないように警告。ある宗教改革者は、「教会の中心となるような人々が堕落しても、信仰者の中で最も小さいと見られている人々が必ず信仰に堅く留まるように」と、将来のつまずきに対する備え励ましの面から。
宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。