【CJC=東京】エジプトのムハンマド・モルシ大統領は12月1日、新憲法案の国民投票を15日に実施すると発表した。
モルシ大統領は先に発表した大統領権限強化の大統領令(暫定憲法)について、新憲法と議会が決まるまでの時限措置としていたが、反発するリベラル派などの野党勢力は大統領令の撤廃、憲法起草のやり直しなどを要求、4日夕から、大統領府周辺などで抗議デモを開き、市民ら10万人以上が集まった。大統領の出身母体、イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」などイスラム主義者もデモを行い、双方の対立が深まっている。
モルシ大統領は8日、大統領令を無効とする一方、新憲法案の国民投票は予定通り15日に実施することを決めた。大統領令撤回により政権運営に反発する野党勢力に譲歩する一方、投票を強行する方針を明確にした。
大統領令の撤回はセリム・アル・アワ氏が8日未明の記者会見で発表した。アワ氏は元大統領候補で、モルシ大統領と反大統領派の間の橋渡しを行う交渉者の1人。
投票延期や憲法案作成のやり直しを求める野党勢力は反発を強め9日、大統領の譲歩は不十分だと指弾。主要な野党の連合体「国民救済戦線」幹部は、「全エジプト人を代表していない憲法を押し通そうとするのは理解できない」と批判、国が「暴力的な対立」に陥る恐れがあるとして拒否する考えを示した。
同派の報道担当は記者会見で、憲法をめぐる一連の手続きには終始反対していると語り、新たな街頭デモを11日に行うよう呼び掛けた。
15日に国民投票が強行されれば、イスラム勢力と、リベラル系や世俗派、少数派コプト教徒の間の分断が深まるのは確実だ。