【CJC=東京】イエス・キリストの生涯を記した教皇ベネディクト16世の著作『ナザレのイエス=イエスの幼年時代』(仮題)が11月21日、バチカン(ローマ教皇庁)出版局から発表された。
イタリア語版はリッツォーリ社が同日に発売した。ブラジル語、クロアチア語、フランス語、英語、ポルトガル語、スペイン語、ポーランド語、ドイツ語の8言語でも同時に出版される。
全176ページ、本編4章と、終章、序文から構成されている。バチカン放送(日本語電子版)によると、第1章では、マタイ・ルカ福音書からイエスを系譜学的に考察。第2章では洗礼者ヨハネとイエスの誕生の告知を取り上げ、特に大天使ガブリエルとおとめマリアとの対話を深く観想している。第3章の中心として、ベトレヘムでの出来事と、イエスの生まれた時代の歴史的背景が取り上げられる。第4章では、東方三博士の訪問の意味を様々な角度から考えている。終章では、少年イエスのエルサレムの神殿での出来事がエピローグとして記されている。
初版は9カ国語合わせて約100万部が全世界50カ国で発売される。
バチカンのフェデリコ・ロンバルディ広報事務所長は記者会見で、教皇は「本作に大きな情熱を注ぎ、自由時間の全てをその完成に捧げてきた」と語った。
教皇の本名ヨーゼフ・ラッツィンガー名で出版される同書は、イエス・キリストの幼少期について記したもので、『ナザレのイエス』3部作の完結編。教皇が、バチカン教理省長官だった2003年から書きためていた。
本名での出版ということは、カトリック教会の教義に関する絶対的な著作ではなく学術書であることを意味している。
教皇は「キリストの誕生を基本とした西暦の基準点を算出したのは、ローマの神学者ディオニュシウス・エクシグウスだが、彼は計算の過程で誤りを犯した。キリストが実際に誕生したのは、現在受け入れられている年よりも数年早かった」と述べ、生誕の場面について「キリストが生まれた家畜小屋には、誕生の場面を描いた絵によく出てくるようなロバや牛などの動物はいなかった」とも記している、と英紙デイリー・テレグラフは報じた。
「ヨルダン川での洗礼から変容まで」を扱った第1巻は2007年(日本語版は里野泰昭訳、春秋社発行)、第2巻「エルサレム入城から復活まで」は11年に出版されている。