【CJC=東京】ロシア正教会の最高指導者モスクワ総主教座のキリル総主教は9月14日、日本を18日までの日程で訪問した。日本に正教会の基礎を築いたロシアの宣教師ニコライ・ヤポンスキイの没後100年に合わせたもの。
キリル総主教は、昨年3月の東日本大震災と津波で最も深刻な被害を受けた仙台主教管轄区域訪問も日程に組み入れ、15日、仙台主教座を訪れた。訪問には、ロシア正教会と日本の自治教会の聖職者が同行、まず受胎告知主教座教会を訪れ、祈祷式(パニヒダ)を行なった。祈祷式には親戚縁者を地震で亡くした信徒や主教座の聖職者らが参加した。
インターファクスなどロシアのメディアによると、総主教は祈祷式で、日本のハリストス教会(ロシア正教会)において仙台は特別な位置を占めているとし、函館から布教を開始した聖ニコライ・ヤポンスキーが信者の集まりを組織したのがまさに仙台であった事実を強調した。
総主教は、息子を亡くした父の心境を詠んだ松尾芭蕉の俳句「萎れ伏すや世はさかさまの雪の竹」をロシア語訳で読み上げた。
総主教は、参加者を祝福し、教会にはカザンの聖母のイコン(聖像画)を、また祈祷式に参加した100人以上に聖ニコライ・ヤポンスキーの小さなイコンを贈った。
総主教は仙台主教セラフィムと信者代表らに教会の器物購入費として10万ルーブル(約26万円)を手渡した、という。
総主教はまた、大震災で被災した仙台市若林区荒浜の慰霊塔を訪れ、犠牲者追悼の祈りをささげた。時事通信によると、キリル総主教は「この大震災で被災した方々と同じ感情を分かち合い、心を一つにしたい」と集まった住民らに語り掛けた。この日は、町内会の呼び掛けなどで住民や関係者ら約200人が集まった。
総主教は1969年以来、総主教の座に就くまでにも日本を訪れている。
今回の訪日を控え、総主教はモスクワで4日、NHK、共同通信など日本メディアとの会見に応じ、「ロシアと日本は多くの点で結びついており、その一つが正教会である」と語った。