関西学院大学の「キリスト教と文化研究センター(RCC)」が27日、公開講演会「アフリカろう教育の父フォスターとキリスト教ミッション」を開催し、講師の亀井伸孝氏(本学社会学研究科COE特任准教授)がアフリカにおけるろう教育の第一人者アンドリュー・J・フォスター(1925−1987)と、そこから始まったアフリカにおけるクリスチャンろう者の働きを伝えた。
ろう教育による福音の伝達にすべてを尽くし、若いろう者やろう児たちに夢を与え続けたフォスターの話に、参加した285人の学生たちは熱心に聞き入っていた。
フォスターは米アラバマ州生まれの黒人ろう者。苦学して大学院を修了した後アフリカ伝道を志し、1957年から31年間にわたってアフリカ各国にろう者のための学校と教会を設立する大事業に取り組んだ。
当時ヨーロッパやアメリカなどの教育先進国におけるろう者への教育方法は、聴者の口の動きで言葉を読み取らせ、「音」の出し方を学ばせる「口話法」が主流だった。だがこの教育方法では、実際に音が聞こえないろう者は内容を理解する以前に教師の言うことすらわからず、ろう者にとって決して満足のいくものではなかった。
フォスターは「Christian Mission for the Deaf(CMD)」というキリスト教団体を設立し、ろう教育が未発達であったアフリカで、「口話法」に代わる「手話」を採用してろう者主体の教育方法を推進した。教員・生徒全員が手話で話す徹底した教育を行い、同時に教育現場の人材育成にも努めた。
その結果、1957年から30年間で13カ国に31校ものろう学校を開設。フォスターは世界で最も多くのろう学校を作った人物となった。
現在、フォスターの弟子である経験豊かなアフリカ人ろう者たちが、事業全体の中枢を担うスタッフとして育っている。アフリカ各国を巡回してろう学校を監督しながら、有能な青年ろう者を発掘し、事業を支える教育の新たな担い手として招くなど、隙間無く教育の伝達に努めている。