同協議会はミャンマー教会協議会(MCC)およびアジアキリスト者会議と共同で、2日から5日にかけてミャンマー旧首都ヤンゴンにあるMCC本部で開催された。スーチー氏は同協議会で参加者らとの対話を通して、平和の構築、人権尊重、自由と民主主義を勝ち取るための闘いに対する単純でありながら奥深い方法を提案した。
スーチー氏は、「嫉妬と憎しみの壁を超えて進まなければならない。その時にこそ和解と平和の道を考えることができる。和解は一方向のみ見ているだけでは進まない。一度和解が成立したならば、平和の実現、治安の確保こそ目指すべき道である。和解し得ない社会においては平和は成りたたないだろう」と述べた。
世界でもっとも有名な政治的軟禁者のひとりであったスーチー氏は現在、倫理的、政治的に分裂しているミャンマーにおいて和解と平和の道を促進している。スーチー氏は2010年11月に解放されるまで15年以上軟禁下に置かれていた。
1991年にノーベル平和賞受賞者とされたものの、実際に賞を授与したのは今年の6月になってからであった。ノーベル平和賞受賞にあたってスーチー氏は、「ノーベル平和賞を受賞するということは、私の民主主義と人権の尊重に関する個人的な関心を国境を超えて広げることを意味している。ノーベル平和賞受賞によって私の心の扉を開くことにつながった」と述べている。
スーチー氏はMCC本部で参加者らとの会話を通して、平和を構築するにはまず自分自身の中に平和を得る必要があると説き、「義人は自分の力を誇って見せようとはしない。他者に親切に振る舞う。このような振る舞い方は、和解と平和に必要不可欠な要素である。他者により良く振る舞える能力が、和解と平和の鍵である」と述べた。
和解のために国境を超えて行く必要
スーチー氏は、「もしある人が他者を嫉妬しているとすれば、その人はいつも誰かを憎んでいる状態にあるということだ。憎しみは最も危険な人間の感情である。自分に自信のない人々は他者の欠点を見つけ出そうとしたがる。そのようにしてさらなる憎しみの感情を抱き、よりネガティブな性格をもって他者と付き合うようになってしまう。そのような行動によって、彼らは一国家や共同体における平和と調和を乱しているのである」と説き、参加者らに対し「和解を第一に置き、次に平和がなされるということを肝に銘じること、そして平和がある時に初めて治安があるという風に、順序をひっくり返して考えることが必要である」と促した。
過去数十年間のミャンマーにおける民主主義獲得の闘いを維持してきた根底にあるものとして、スーチー氏は仏教の精神的な伝統がその礎にあり、すべての信仰ある人々の一致した祈りにも支えられてきたと答えた。
経済的発展と民主化の最中にあるミャンマーにおける国際共同体の役割として、スーチー氏は「法と正義は分離できるものではない。いかなる社会にあっても経済の発展が民主主義の主軸にあるのではなく、政治的発展が人々や共同体の中で平和を得るために必要不可欠である。国際共同体はあらゆる社会において和解と平和を促進するための主要な役割を担っている」と述べた。
スーチー氏は今回の協議会での対話を通して、多くの摩擦が生じている今日の社会における独特のモデルを提唱し、自身がいかに国民を愛しており非暴力の平和を成していきたいかを熱心に伝えた。
CCIA協議会では、政治的、倫理的に分裂状態にあるミャンマーにおいて平和構築のための進歩的な戦略を達成しようとしている。今回の協議会には40人が参加した。協議会ではより幅広い諸教会がエキュメニカル運動に加わっていくことでミャンマーにおける摩擦に対応し、和解と平和構築のためにより多くのキリスト者が参加して行くことが出来る道を模索している。
※スーチー氏をテーマにした映画「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」公式ホームページはこちら