【CJC=東京】米国務省は7月30日、世界各国の宗教規制に関する報告書を発表した。ヒラリー・クリントン国務長官が『2011年国際宗教の自由報告書』を連邦議会に提出した。米国は1998年、「国際宗教自由法」(IRFA)を制定している。
国務省の国際信教の自由担当スーザン・ジョンソン・クック特使が、世界の約半数の国では「宗教少数派を虐待したり、社会的に虐待を受けていても介入しない」と報告書発表に際し指摘した。
報告書は、特別観察リストに、アフガニスタン、中国、キューバ、エリトリア、イラン、北朝鮮、パキスタン、ロシア、サウジアラビア、スーダン、シリア、ベトナム、ウズベキスタン、トルクメニスタンを上げている。
報告書は、11年には世界で反ユダヤ主義が拡大したと指摘。また、イランで「宗教的信仰を理由とした拘束、嫌がらせ、脅迫、差別」が起きるなど、宗教の自由をめぐる状況が悪化した国もあったとした。
パキスタン、サウジアラビアでは、人々が冒とく法に違反したとか批判したとして、殺害されたり、投獄・監禁されている。インドネシアでは、キリスト者が「イスラム教を攻撃する」と見なされた本を配布したとして禁固5年の判決を受けている。これらの法は、「宗教を保護する」名目で人々を沈黙させている、と言う。
報告書は、中東の民主化運動「アラブの春」による政変の流れの中で、宗教上の少数派が危険にさらされていることを指摘した。特にエジプトではコプト派キリスト者への暴力増加を阻止することに失敗したとしている。暫定統治を担う軍部が寛容な姿勢を示す裏側で宗派間の緊張が高まり、コプト教徒中心のデモ隊が治安部隊の攻撃を受け、死者25人、負傷者350人が出た例などを挙げた。さらに、暫定政権はキリスト教徒を狙った暴力や教会への攻撃を阻止できず、実効性のある捜査や訴追もできていないと指摘している。
宗教少数派が認知を求めて戦っている例もある。ハンガリーでは、認可宗教団体が300以上あったのが32にまで減少している。
中国では政府による自由尊重の取り組みが悪化したと批判、状況は「著しく悪化している」と指摘した。中国政府は認可した少数の宗教団体にしか合法的な礼拝を認めず、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒やキリスト教の地下教会への弾圧も続いているとしている。チベット仏教寺院での宗教活動の制限拡大なども指摘、「当局による宗教行事への干渉が不満を拡大させた」とし、これを受けて11年に少なくとも12人のチベット族が焼身自殺を図ったとしている。
北朝鮮に関しては「真の宗教の自由は存在しない」と断言。布教活動や宣教師らとの接触を理由に逮捕されたり厳罰を受けたりしたケースも報告されているとした。
報告書はまた、欧州諸国に外国人の排斥運動や反ユダヤ教、反イスラム教の動きが広がっていると指摘した。さらに、ロシアやイラク、ナイジェリアでは、「対テロ戦」という名目で平和的な宗教活動が取り締まりの対象になったとしている。
歓迎すべき動きとして報告書は、トルコが過去に宗教団体から没収した資産の返還を容易にする決定をしたこと、リビア最高裁がイスラム教への冒とくを罰する法律を覆したことなどを挙げた。
キューバ、ロシアも状況が改善された国として上げられている。