第一章 ウルトラ良い子論(続)
さて、このような天与の鋭敏で、かつ純正な生まれつきの卓越した感性を付与された「ウルトラ良い子」の存在とその性質については、今日までほとんど洋の東西を問わず世間で話題にされたことがなく、しかも専門家たちの間でさえこの問題に真正面から真剣に取り組んで来た者がいませんでした。
筆者は、過去50年の間、心傷つき病む青少年たち、また同様の多くの大人たちのケアーに当たる中で、徐々にこの「ウルトラ良い子」の存在とその性質について気づかされ、人間関係をまろやかに結び得ず、社会的不適応や様々な異常心理、異常行動を惹き起こしてしまう、いわゆる世間で境界性人格障害、解離性障害、行為障害、更には摂食障害、各種依存症、果ては非行などと呼ばれる様々な病める症状を呈する人々の内の大部分が、何と本来はこの「ウルトラ良い子」であったという驚くばかりの事実を発見するに至りました。この発見は、同時に筆者にとって二つの重大なチャレンジとなって、心に深く迫って来ました。
その二つの重大なチャレンジとは、他でもなく第一は、では「何ゆえかかる『ウルトラ良い子』が、心傷つき深く病む存在となってしまわなければならなかったのか」という重大な問いであり、第二は、言うまでもなく「如何にしたらこの心傷つき深く病んでしまい、かつ異常心理、異常行動を惹き起こしてしまっている『ウルトラ良い子』たちを癒やすことが出来るのか」という重大な問いでした。
爾来今日に至るまで、筆者はひたすらこの二つの重大な問いに答えたいと切に念願しつつ、この「ウルトラ良い子」論を基盤に据えて、数多くのクライアントと共に、直面する多様かつ深刻な事例の解決に従事してまいりましたが、その結果そこに見出したこれまた驚くばかりのすばらしい事実がありました。それが「アガペー(真の愛)による全面受容とその全き癒やしの道」と呼ばれるものでした。これはまさに驚くばかりの真理であり、癒やしの法則(原理)です。筆者は、これを「神が人類に与えられた永遠不変の人間性への癒やしの原理」と呼んでいます。これは「天与の法則」であり、人間を愛し給う神からの大いなる祝福の賜物です。この点に関しても後で詳細記述することにいたしましょう。
なおここで、一言前置きさせて頂きたい大切な一事があります。それは何とこの「アガペーによる全面受容とその全き癒やしの道」は、如何なる種類の心傷つき、病みかつ苦悩する人々にも適用可能であり、この道に従って歩む者には必ず待望の癒やしが訪れるという事実です。本稿をご一緒に最後までじっくりと学んでくださる方々には、この事実がきっと納得していただけるものと確信しています。次回は、「ウルトラ良い子」の特質について述べてみましょう。
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峯野龍弘(みねの・たつひろ)
1939年横浜市に生れる。日本大学法学部、東京聖書学校卒業後、65年~68年日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会、68年淀橋教会に就任、72年より同教会主任牧師をつとめて現在に至る。また、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会および同教会の各地ブランチ教会を司る主管牧師でもある。
この間、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン総裁(現名誉会長)、東京大聖書展実務委員長、日本福音同盟(JEA)理事長等を歴任。現在、日本ケズィック・コンベンション中央委員長、日本プロテスタント宣教150周年実行委員長などの任にある。名誉神学博士(米国アズベリー神学校、韓国トーチ・トリニティー神学大学)。
主な著書に、自伝「愛ひとすじに」(いのちのことば社)、「聖なる生涯を慕い求めて―ケズィックとその精神―」(教文館)、「真のキリスト者への道」(いのちのことば社)など。