米国に拠点を置く国際的な人権団体であるヒューマンライツウォッチ(HRW)は先週、アフガニスタンの情勢について「タリバン勢力は追放されたものの、アフガニスタンにおける女性に対する扱いは悪化しており、強姦の被害に遭ったり、「道徳的な罪」を犯したとして何年も刑務所に収容されている多くの女性が存在している」と報告した。米クリスチャンポスト(CP)が報じた。
報告書のタイトルは「逃げなければならなかったのに-アフガニスタンで『道徳的犯罪』により収監された女性たち」と題され、3月28日にHRWから出版され、アフガニスタンの刑務所に収容されている女性たちの状況が詳細に報告された。
報告書によると「道徳的犯罪」で逮捕された女性たちは何年も収容されることになり、この様な状況を放置しておくことで、アフガニスタン国内の家庭ない暴力や強姦のがはびこる状況が残ったままとなることが懸念されることが指摘された。報告書では「一部の女性は結婚による以外の性交渉を行った罪に問われ収容されているものの、もともとは売春をするように強制されて止むを得ず行われたものもある」という。
タリバン政権崩壊後、公教育や公的な場への参加などアフガン国内の女性の社会的地位の多少の改善は見られたものの、間違った訴えによる家庭内暴力被害者や強姦された女性の逮捕、刑務所への長期間の収容は、同国の女性の人権が十分に守られていないことを示していると報告された。
HRWディレクターのケネス・ロス氏は「タリバン組織に属する女性たちは強制結婚や家庭内暴力から逃げ出そうとした罪により逮捕され、10年経ってもまだ収容されたままであることは衝撃的なことです。家庭内の危険な状態から逃げ出そうとした女性が逮捕され刑務所に収容されたままとなるようなことが決してあってはなりません」と訴えている。
アフガン社会における女性の社会的地位は、全国に広がる法的、政治的、社会的体制により陥れられたままの状態が続いている。さらにアフガン警察との非合法で偏見に満ちた女性に対する訴えの受容、訴えられた女性を弁護する体制ができていない状態が不当に刑務所に収容される女性を増加させているという。
米ニューヨークでアフガン女性の権利向上のために活動するヤルダ・アフィフ氏は、米CPに対し、アフガン女性の社会的地位の問題について「このような女性に対する暴力が世界中ではびこることには、多くの理由が存在しています。しかしアフガニスタンに限って言うならば、文化的な理由が大きく占めていると言えるでしょう。アフガニスタンの女性の状況は日に日に悪化しています。毎日のように女性に対する暴力が生じるようになっています。このような女性に対する暴力が蔓延したままになっているのは、そのような文化の中に人々が取り残されてしまっていることが大きな理由と言えるでしょう」と伝えた。
アフガニスタンでは、同国文化が「アメリカ化」していくこと、信仰の改宗含む外国勢力の介入に対する警戒感が強く、長い間問題とされてきた。一方アフガニスタンのイスラム教指導者層の人々と共に働く女性たちは、アフガニスタンで蔓延する女性に対する暴力は何年にもわたる政情不安定によるものであり、宗教によるものではないと主張しているという。アフィフ氏は「イスラム教の指導者たちは、本当のイスラム教とは何かについて教育しようとしています。神の御心に従いたいのであれば暴力を行うべきではないと教えています。良きイスラム教徒であれば、そのような暴力をすることはないと伝えています」と述べている。
アフィフ氏は「もし米軍がアフガニスタンから完全に撤退するなら、アフガニスタンの女性の置かれる状態は更に悪化するでしょう。米国が駐在しなくなれば、タリバン政権が復帰し、さらに女性を悪い状況へと貶めるでしょう」と警告している。