【CJC=東京】中米・カリブ地域を初めて訪問する教皇べネディクト16世は3月26日、キューバ東部のサンティアゴ・デ・クーバに到着した。空港では歓迎の祝砲が放たれ、ラウル・カストロ国家評議会議長らが出迎えた。
教皇のキューバ訪問は、前任者のヨハネ・パウロ2世が1998年に訪問して以来14年ぶり。
教皇は信仰の大切さを説き、教会と同国との良好な関係が必要だと指摘した。カストロ議長は歓迎演説で、キューバは平和と正義のために努めてきたと強調、しかし「ヨハネ・パウロ2世の訪問から14年がたっても」、米国のキューバに対する経済制裁は解除されていないと訴えた。
教皇の車列が通る沿道では大勢の人たちが国旗を振って歓迎したが、キューバの反体制派は式典出席を阻止されたと語っている。少なくとも50人が拘束されているという。
教皇は、サンティアゴ・デ・クーバで「コブレの聖母」発見400周年を記念するミサを捧げた。教皇は27日、コブレの慈悲の聖母像が安置される市内の巡礼聖堂を訪問、聖母像の前で祈りを捧げた。
その後、教皇は首都ハバナに移動、市内の革命宮殿でラウル・カストロ国家評議会議長と約1時間にわたり会談した。
教皇は会談で、カトリック教会が「積極的な貢献」をしていく用意があると述べ、神学校建設やメディアによる布教などを通じ、キューバ社会で一定の役割を果たしていく考えを伝え、教会の権利拡大などを求めたとみられる。バチカン(ローマ教皇庁)は、「人道的な要請」も行ったとしており、政治犯の釈放などの問題が提起された可能性がある。
一方、マリノ・ムリジョ閣僚評議会(内閣)副議長は記者会見で、「キューバでは政治改革は行わない」とし、政治体制を維持する姿勢を強調、民主化をめぐる双方の隔たりは解消されてはいない。
教皇は28日、革命広場で市民参加のミサを行った。約30万人の信者が集い、教皇の声に耳を傾けた。
「わたしの言葉にとどまるならば、あなたたちは本当にわたしの弟子である。あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」(ヨハネ8・31)というイエスの言葉を示し、教皇はミサの説教で真理と自由の切り離せない関係について語った。
キューバの教会がイエスを人々に示し、その信仰を公に告げるという使命を果たすためには、基本的な宗教の自由が保証されなければならないと教皇は強調した。教皇は、近年その状況に大きな進歩が見られたことを歓迎する一方、教会がこの歩みを続け、共通善のために社会でより奉仕できるよう、政府の協力を呼びかけた。
1959年のキューバ革命以来、長年同国を率い2008年に病気療養のため引退したフィデル・カストロ前議長と教皇は28日会談した。
教皇は同日夕、ハバナのホセ・マルティ国際空港を出発、29日午前ローマに到着、バチカン宮殿に戻った。ハバナでは、雨にもかかわらず、バチカン大使館から空港に至るまで、教皇を見送るために市民たちが長い列を作った。