世界で未だ2700万人もの人々が奴隷の扱いを受けていると知った時、ベス・レッドマンは病気になるほど嘆き悲しんだ。そして彼女は何か行動を起こさなければならないと悟った。
ベスは、「Heart of Worship」や「Let Everything That Has Breath」といったクラシッククリスチャンソングで知られる作曲家の夫マット・レッドマンと音楽仲間たち数人を集めて、シングル曲「Twenty Seven Million(2700万)」を生み出した。
「Twenty Seven Million」は、英国ロンドンの性風俗のために人身売買された東欧の少女の実生活を描いている。マットとクリスチャンラップグループのLZ7が歌う同曲は現代の奴隷問題の解決を目指し、人身売買撲滅の意識向上に貢献している。
ベスは英国クロスリズムで、「この活動には賛美が必要なのよ。私の希望はこのシングルが人々の祈りの助けとなると同時に、お金と時間を結集させること。そして最終的な夢は2700万人のような苦しむ人々がこの世からなくなることなの」と語った。
マットは自身のウェブサイトで、「今日の世界には現実として2700万人の奴隷が存在している。彼らは声を出せないが、僕たちが彼らの声になることができるんだ。どうかiTunesでこのCDを買ってもらいたい。僕たちに力を貸してくれるなら、僕たちはこの重要な課題に立ち向かう大きな力を得ることができるだろう」と述べている。
CDは世界中で大きな反響を呼び、リリースから数週間で既にチャートのトップに躍り出ている。ゴスペルミュージックチャートでは1位、iTunesのランキングでは米国でトップ40入りを果たし、英国では3位、ブルガリアでは1位を記録した。
これを受けてベスはツイッターで、「日夜反対活動に励む声が集まった曲『Twenty Seven Million』をダウンロードしてくれた皆さん、ありがとう」とコメントした。同CDの売り上げは全て、21世紀における不正の廃止のためにクリスティーン・ケーン氏が創設した「A21キャンペーン」に寄付される予定。
ケーン氏は世界中、特に欧州で起こっている不正についてベスの目を開かせた女性だった。2人は初めヒルソング・カンファレンスで出会い、その後、北アイルランドのベルファストで開催された女性カンファレンスで偶然再会。その際、豪州シドニーにあるヒルソング教会の著名なリーダーであるケーン氏がA21キャンペーンと人身売買問題についてベスに語った。
「なぜ私はこのようなことを知らなかったのかしら。私はどこにいたのかしら」ベスはケーン氏のフェイスブック上の文章を回想した。「私はこの問題の中に多くのクリスチャンの慰めを投げ込んでいるの。社会から追いやられ奴隷となっている2700万人の人々に代わって」
ベスは、「私の魂は苦しみを感じて、何か行動しなければならないと思ったの。この問題を知ることによって私の人生と使命は永久に変えられたのよ」と語っている。
夫と子どもたちとともに英国に移り住んだベスは、2008年に建設されたA21の人身売買犠牲者のための施設を見学するためギリシャを訪れた。彼女は、「そこで私は若い少女の頃に自由を奪われた女性たちに出会ったの。彼女たちは解放されて、A21の活動と努力に感謝していたわ」と述べた。
安全と愛と慰めの環境に満たされたその場所は、犠牲者に対する献身的な組織の初めての施設であり、医療処置や心理学的評価から、職業訓練、大学教育の援助、生活相談やカウンセリング、法的なサポートまで提供している。
施設訪問によって触発されたベスはA21や別のNGOの活動に参加し、闇業者を告発して奴隷の解放を求めてきた。彼女は最早、何もせず傍観していることはできず、残酷な出来事を真っ向から受け止めることにした。
A21によると、現在世界では性産業の奴隷状態にある犠牲者は139万人に上るという。また、人身売買は世界で2番目に大きな組織犯罪として年間約316億ドル(約2兆6000億円)の暴利をむさぼっている。特に性的搾取を目的とした取引では年間278億ドル(約2兆3000億円)もの金額が動いている。
人身売買の犠牲者の90パーセントはEU(欧州連合)加盟国に売られる。その中から救出されるのは1パーセントから2パーセントの犠牲者に過ぎない一方、取引に関与した人々の中で有罪判決を受けるのは10万人に1人とされる。
ベスは、「私たちはその統計に圧倒される必要はないわ。私たちができることはむしろその行為を廃絶することなの」と語った。
レッドマン夫妻とLZ7はA21とともに活動することで、「立ち上がろう」と教会に呼び掛け、問題意識を高めることを望んでいる。マットは、「僕たちはこのようなニュースを読むことができ、そのような社会の『今』をテーマにした全ての出来事を聞くことができるんだ」と述べた。
ケーン氏は敬虔なクリスチャンだが、犠牲者を伝道しようとはしなかったとCNNに伝えた。また彼女は、人身売買撲滅運動はクリスチャンだけでなく、21世紀における争いや不正を廃止したいと思う人ならば誰でも参加できると語った。
A21の活動は主に、過去20年にわたって女性の人身売買の増加が目まぐるしい欧州で行われている。活動の目的は4つで、人身売買が行われないようにすること、犠牲者を保護しサポートすること、加害者を告訴し法的な主張を強めること、そして人身売買への包括的な対応を取ることができるコミュニティを構築することにある。
ベスは、「A21は驚くべき活動を展開していて、人身売買の加害者を告訴するだけでなく、警察とも連携しているの。そして犠牲者を救助していて、施設の中に彼らを連れてきたり、リハビリさせて元の生活に戻してあげたりして希望を与えているのよ」と無償の働きを称賛。「私たちは新しいシングルで問題意識を高めるだけじゃなくて、寄付を募って犠牲者を助けることを望んでいるの」と付け加えた。
CDの販売を促進するためレッドマン夫妻はLZ7とともに、「トゥエンティー・セブン・ミリオン・ツアー」を開催し、ベルファストやマンチェスター、ロンドン、ピーターバラといった各都市を訪れた。
新曲による興奮の最中でケーン氏は支援者たちに、少女に自由を得させるために書かれた曲の意味を忘れないで欲しいと望み、自身のブログに、「彼女の意志に反して未だ強制的に奴隷のように働かされている人がいる。彼女たちは声を発することができず、長い間救助を待っている」と記した。