【CJC=東京】エジプト・アレキサンドリアのキリスト教「コプト教会」の最高指導者、第117代教皇シェヌーダ3世が3月17日死去した。88歳。肺や肝臓の疾患で長く闘病生活をしていた。
1971年11月着座以来、約40年にわたって教皇を務め、ホスニ・ムバラク政権が打倒された後は、激化するイスラム過激派による攻撃から信者を守ることに努めた。
18日にはカイロのサンマルコ大聖堂で木製の玉座に据えられた遺体が公開され、教皇との最期の別れをするために大勢の信者が集まった。教会前にできた信者の列は1キロに及び、軍が警備に当たったが、熱射病などで倒れる人も出ている。
大聖堂内部では、遺体を一目見ようとする信者が押し合いになり、3人が圧死、50人が負傷した。国営テレビは信者に対し、遺体は葬儀が行われる20日まで公開されているので無理に押しかけないよう呼びかけている。
遺体は遺言に基づきカイロ北西のナイル川デルタにあるワディ・ナトルーンの聖ビショイ修道院に埋葬される。シェヌーダ3世は1970年代、アンワル・サダト政権のイスラム教過激派対策を批判、79年にはイスラエルとの平和条約締結に反対したことから、サダト大統領は81年、教皇をこの修道院に一時幽閉した。
シェヌーダ3世の死を悼み、ローマ・カトリック教会の教皇べネディクト16世は追悼の祈りを捧げた。またバラク・オバマ米大統領は、シェヌーダ3世の寛容さと他宗教との対話姿勢をたたえるメッセージを発表した。
教会は後継者選びを始めている。市評議会から候補3人が選出され、3人の名が書かれたものを箱に入れ、幼児がそこから取り出した1人が後継者になる、という。後継者が、故教皇に続き、エジプトで圧倒的に優勢なイスラム教徒の融和への道模索を迫られることは確か。
コプト正教会は中東最大のキリスト教派で、信者はエジプトの人口の約9パーセントにあたる700万人と推計されている。