昨年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の放射能被害に対し、世界教会協議会(WCC)は12日、福島原発被害に遭遇したすべての人々に対する追悼のメッセージと、今後の持続可能なエネルギー政策と平和な世界に対する具体的取り組みを促すメッセージを発表した。
WCCは、「福島原発被害が結果的にどの程度の被害になるのかまだ明らかではありません。しかし私たちは原発事故によって大量の放射性物質が大気、土壌、そして海洋に放出されたことを認知しています」と述べた。実際福島原発事故による放射能被害で死者も生じており、今後放射能被害による発がんが懸念される住民は100人から1000人程度となることが懸念されている。さらに10万人以上もの人々が放射能被害により避難生活をせざるを得ない状態へと追いやられた。
WCCは「福島原発事故によって、原子力発電に関する安全性を伝えるさまざまな見解にもかかわらず、原発事故は起こらないという保証はどこにもないことがわかりました。残念ながら原子力産業および規制当局は、原発事故の被害を最小化しようと努めながらも、実際に被害を受けている人々に対し適切な保護や支援を提供できていない現実が生じています。また興味深いことに、原発事故をまだ経験していない多くの国々が原子力使用を段階的に止める動きを見せており、それらの国々でエネルギー不足の危機は生じていません。日本では現在54基の原子力発電所のうち2基のみが運転されています。またドイツでは自国の原子力発電所の半分の運転を永久的に閉鎖しました。それにもかかわらず、両国において電力不足は起きておらず、他のエネルギー資源の効率的な使用を追求しています」と述べた。
また、今後の世界各国のエネルギー政策について「今年5月にブラジルリオデジャネイロで国連持続可能な開発会議(リオプラス20)を開催するにあたって、国連は加盟各国に対し、すべての人々にとって持続可能なエネルギー開発を推進していくことを呼びかけています。福島原発事故の被害とその犠牲者を深く覚え、各国政府にとって持続可能なエネルギー政策を追求していく明確なステップを取って行くことが会議で促されることを祈っています」と述べた。
またキリスト者として、「私たちは神様が『羊がいのちを得、またそれを豊かに持つ(ヨハネ10・10)』ために私たちを召されたことを信じています。福島原発事故は、被災地のすべての生命を脅かし、またこの脅威はすべての国の原発施設周辺で生じ得るものであることに気づかせられました。福島原発事故から間もなく、世界各国から千人ものキリスト教諸教会代表者らがジャマイカに集い国際エキュメニカル平和会議(IEPC)が開催されました。IEPCにおいて『東日本大震災後、原子力エネルギーの平和利用に関する差し迫る疑念が生じるようになり、原子力エネルギーが自然と人権に脅威を与えるものであることに気づかせられるようになりました。福島原発の大災害は、改めて私たちがこれ以上原子力をエネルギー資源のひとつとして利用し続けるべきではないことを確信させるものとなりました』と発表されました」と伝えた。
WCCは「福島原発事故の犠牲者の方々に深く追悼の意を表すると共に、福島原発事故後の被災地の支援に携わってこられたWCC加盟諸教会の方々の多くの人道支援、カウンセリングその他物質的支援や放射能被害の継続的測定の努力に大きな敬意を表します。キリスト者として、キリスト教共同体として、国家として、このような悲劇が2度と繰り返されることのない世界となるための、具体的な取り組みをしていくことに努めていきたいと思います」と述べた。