米国ペンシルベニア州立大学(ペン・ステート)フットボールチームの元監督ジョー・パターノ氏が1月22日、肺がんのため85歳でこの世を去ったことを受けて、彼の母教会は同日の礼拝後にその死を悼んだ。
同大の位置するユニバーシティパーク内にあるカトリックのキャンパス・ミニストリー教会で老夫婦チャールズとジョウ・デュマス氏は、「パターノ監督に一つだけ、ありがとう」と書かれたTシャツを着ていた。彼らは神父のデビッド・グリフィン氏からパターノ氏の死を知らされたという。
パターノ氏は同大フットボールチームの監督として通算409勝を挙げ、NCAA(全米体育協会)ディヴィジョン1フットボール・サブディヴィジョンにおいて最多勝利記録を保持するなど多くの栄光を掴んだ。彼は1月13日に病院に搬送され、同22日に家族に看取られて死去した。
訃報を受けたフットボールファンの65歳の教授チャールズ・デュマス氏は、一人の時間を過ごすためその場を立ち去った。一方、大学の講師だった彼の妻はすすり泣きを始めたとピッツバーグ・ポスト・ガゼット紙は報じた。
チャールズ氏は同紙に対し、「素晴らしい恩人である偉大なる人物の死は私たちにとって大きな損失であるだけではない。米国にとっての損失なのだ。彼は監督や教師のあるべき姿を示してくれた」と語った。ジョウ氏は「人としてのあり方もね」と付け加えた。
さらにチャールズ氏は、「この偉大なる人物の最後を素晴らしいものにできなくて残念だ」と嘆き、「(フランスの詩人・小説家の)ヴィクトル・ユゴーがパリで亡くなった時、皆が通りを走り回りながら『ユゴーが死んだ!我らのヒーローが死んだんだ!』と叫んだという。そんな最後をジョー・パターノに与えたかった。彼は私たちのヒーローだったんだから」と語った。
また老夫婦は、「子どもたちへの性的虐待を止めよう」と書かれたTシャツをもっており、それを「パターノ監督に一つだけ、ありがとう」のTシャツと交互に着ていると明かした。ジョウ氏は、「これがこの重大な局面において最も重要な2つのメッセージなの。私たちは皆、子どもたちへの性的暴行を排除するために活動していかなければならないのよ」と述べた。
パターノ氏は肺がんと診断された昨年11月、同大フットボールチームの元アシスタント・コーチのジェリー・サンダスキーによる性的虐待スキャンダルにより、46年間続けてきた同大フットボールチームの監督職を解任された。パターノ氏は2002年、虐待の事実を知って大学の職員に報告したものの、警察に連絡を取らなかったとして非難を浴びた。
このことについてジョウ氏は、何をすべきか分からなかったのはパターノ氏だけではないとし、「彼は私たちのうち誰もが行うだろうことをしたのよ。それを解決する権限のある人のところに行ったのよ」と擁護した。一方、チャールズ氏は、人の一生は数分もしくは数時間によって定義されるべきではないとし、「人生は長年築き上げた業績によって定義されるものだ。それこそがジョー・パターノの一生なのだ」と語った。
元ペンシルバニア州知事のエド・レンデル氏もパターノ氏を称賛し、「ジョー・パターノは間違いを犯したが、信じ難いほどポジティブに人生を歩んでいたと思う。彼は素晴らしい人物として私の記憶に刻まれている」と述べている。