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ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(26)朝光寮での奉仕を踏まえて

2017年1月10日15時15分 執筆者 : 社会鍋100年調査隊 印刷
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朝光寮での奉仕を踏まえて
救世軍引退士官 F岡さん

F岡さんは、救世軍に導かれてクリスチャンになってから、軍属(職員)として大阪にある救世軍の婦人保護施設・朝光寮で3年ほど働いた。1949、50(昭和24、25)年ごろで、まだ戦後の混乱が続いていた時代だった。

赤提灯を下げ

当時、「パンパン」と呼ばれる米兵相手の娼婦たちが、日暮れになると遊郭から歓楽街に出て行っては客引きをしていた。F岡さんたちは彼女たちを遊郭から引き出して更生させるために、夜になると「救世軍」と記した赤提灯を下げ、天王寺駅周辺に出掛けて行った。遊郭の入り口には、ピストルをちらつかせた暴力団員のような用心棒がいた。

逃げ出そうとする女性を引き止めるためなのか、出入りする人たちを見張っていた。そのそばで警察官が日向ぼっこをしており、脇には握り鮨(にぎりずし)がぎっしり詰まった桶が置いてあった。当時庶民には手が届かなかった握り鮨は、遊郭が警察官のために用意したものだった。

売春を見逃してもらうための対策の1つだったのだろう。警察官は外からやって来る人に「危険ですから、ここには入らないでください」などと声を掛けていた。そんな時代だったのだ。

救世軍の制服を着て

F岡さんは、売春をやめて朝光寮に入ることになった女性が遊郭に残してきた荷物を、1人でもらい受けに行ったことが2回ある。F岡さんはまだ26、27歳ごろだったが、救世軍の制服を着て行ったので、入り口で見張っている暴力団員を怖いと思ったことはなかった。

朝光寮では50人ほどの女性が保護されていた。

ある女性は、戦争で両親を失って孤児となり、親戚に預けられた。しかし、日本中の人が食うや食わずの生活をしていた時代だったので、親戚に厄介者扱いされていじめられ、いたたまれなくなったものの、他に身を寄せるところもないまま娼婦に身を落としていったのだった。

知恵遅れの女性も保護されていた。「私は、寮長のそばで彼女たちの身の上話を聞きながら、泣けて泣けて仕方がありませんでした。神様がおられるなら、世の中にはなぜこんなにも不幸な女性がいるのだろう・・・。まず、そのことが疑問でならなかったのです」とF岡さん。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(26)朝光寮での奉仕を踏まえて
1983(昭和58)年2月 大阪にある救世軍の婦人保護施設・朝光寮正門

人生の裏道を歩くしかなかった女性たち

女性たちには、少しでも生活の足しになるように内職をしてもらった。しかし、内職といっても、婦人物のヘアネットのゴム通し、アイスクリームカップの紙底貼付といった工賃の安い単純作業しかなかった。幸い就職口が見つかり、寮を出て自活できるようになった人もいた。

F岡さんはよく寮内で伝道した。あの頃は、聖書を十分学んだわけではないのでよく分かっていなかったが、女性たちに、旧約聖書に出てくる3つの種族、セム・ハム・ヤペテについて語ったりもした。しかし、「そういえば今朝のおかずはハムだったね」と言って混ぜ返す人もいて、分かってくれたのかどうか反応がはかばかしくなかった。

ほとんどの女性たちが、F岡さんよりも年上だった。「私は、福祉の専門的な勉強をしたわけでもなく、四国出身の田舎者で、若くて世間知らずでした。辛酸をなめ、人生の裏道を歩くしかなかった彼女たちには、とても歯が立たない。そういう意味でも、初めから過酷な場所に置かれてしまったと思いました」とF岡さんは当時を振り返る。

人を生かすのは聖書の言葉

警察に保護されている女性をもらい受けに行ったことも2回ある。寮長さんに、「気持ちをしっかり持って連れ戻すんですよ」と言われて、F岡さんは1人で緊張しながら出掛けた。

ある日、女性と警察を出てから駅まで行き、電車に乗ろうとしたときだった。彼女は突然走り出して、反対側のホームに入ってきた電車に飛び込んだのだ。前途をはかなんで自殺しようとしたのだ。

幸い彼女は、手にけがをしただけで済んだ。「このショッキングな出来事を通して、つくづく思ったことがあります。たとえ女性が賤業から救い出されたとしても、それだけでは生きる気力や希望は生まれない。人を心底から救うのは聖書の言葉なのだと」とF岡さんは語る。

F岡さん自身、クリスチャンになる前は、人は何のために生きるのか悩み続け、自殺したいと願い続けていた者だった。結局、キリストの中に永遠の命があることを知り、神の言葉を通して生きる力を頂く経験をした。「もちろん社会福祉も大切ですが、やはり人を生かすのは聖書の言葉です。そのためには、直接伝道することが一番大切ではないかと痛感しました」とF岡さん。こうして、F岡さんは朝光寮での貴重な体験を踏まえて、やがて士官学校を卒業し、士官(牧師)への道を歩み出したのだった。

(文・社会鍋100年調査隊)

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ボランティア100年やってます

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