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日本キリスト教教育学会第28回学会大会:「キリスト教幼児教育」に関する4人の実証研究

2016年7月6日23時31分 記者 : 坂本直子 印刷
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+日本キリスト教教育学会第28回学会大会:「キリスト教幼児教育」に関する4人の実証研究
学会大会は若手研究者の発表の場でもある。「キリスト教絵本『もぅぅんバベルのとう』に見る物資至上主義批判」とのテーマで報告する北海道大学大学院生の山口恵子氏=6月25日、明治学院大学(東京都港区)で
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日本キリスト教教育学会第28回学会大会が6月24、25の両日、明治学院大学(東京都港区)で開催された。2日目の午前は、テーマ別に4つの会場に分かれて研究発表が行われた。そのうち「キリスト教幼児教育」をテーマにした会場では、4人の報告者が実証研究の成果を発表した。

発表者は、北海道大学大学院生の山口恵子氏、東洋英和幼稚園園長の鈴木法子氏、東洋英和女学院大学付属かえで幼稚園園長の大漉知子氏、同幼稚園保育主任の永瀬真澄氏。司会は、信愛学園宗教主事の駒木亮氏、東洋英和女学院大学教授の甲斐仁子氏が務めた。

最初に登壇した山口氏は、「キリスト教絵本『もぅぅんバベルのとう』に見る物資至上主義批判」とのテーマで報告した。山口氏は、バベルの塔の物語を主題とした絵本『もぅぅんバベルのとう』が単なる聖書の物語を伝えるだけでなく、そこに作者の隠されたメッセージがあることを、実際の絵本に書かれた内容を通して論じた。

『もぅぅんバベルのとう』は、至光社が発行する月刊カトリック保育雑誌『こどものせかい』に1992年10月に掲載されたもの。作者の三好碩也はクリスチャンではないが、聖書をもとに幾つもの絵本を書いている。同書は、子牛の視点からバベルの塔の物語を語るユニークな内容となっている。「なぜ三好は子牛の視線を通してこの物語を語らせたのだろうか」。それが山口氏の問題意識だ。

山口氏は、絵本の中に出てくる絵を丁寧に分析し、子牛と自然との結びつきを見いだした。また、この絵本が発行されたのが、日本のバブル経済が崩壊した直後であることに注目し、「豊かな経済力を背景にして物質主義に傾いてしまった日本社会への警鐘を込めて、作者はバベルの塔の物語を重ねてこの絵本を書いたのではないか」と結んだ。

一般書を扱う出版社で、著者もクリスチャンとは限らない中で生まれた聖書の絵本が、子どもたちにどう読まれているのかも、研究のポイントの1つだという。

日本キリスト教教育学会第28回学会大会2日目 キリスト教保育について4人の報告者が研究成果を発表
日本キリスト教教育学会第28回学会大会2日目の研究発表の様子

続いて鈴木氏は「関係性における幼児の自己発見―見失った羊のたとえから―」とのテーマで発表した。幼稚園年長組の園児の1年間を記録し、発達心理学と神学的人間論のアプローチとの接点で論じる方法を用いて分析を行った。

ままごとや、ページェント、工作、劇などの事例を報告し、幼児が遊びを通してアイデンティティーを形成し、聖書物語の人物に自己同一化しつつ、自律から神律へ導かれることを論じた。さらに、遊びが人間の自由における「本質的自己形成」につながる重要な視点であることを主張し、幼児の遊びが優れて宗教的であることを検証した。

鈴木氏は、乳幼児が、親や社会の子どもであると同時に「神の子ども」であることを強調した。その上で、現在行われている戦後最大の保育改革に、宗教教育の立場から子どもを捉える視点が欠落していることを指摘。「集団保育の問い直しに、宗教教育学的遊び論の視座が加わるならば、より豊かな幼児の生の創造に寄与することができるに違いない」と語った。

日本キリスト教教育学会第28回学会大会2日目 キリスト教保育について4人の報告者が研究成果を発表
日本キリスト教教育学会第28回学会大会が開催された明治学院大学

大漉氏と永瀬氏は「『キリスト教保育』における平和―A子母子との1年間より―」とのテーマで発表した。両者が勤務する東洋英和女学院大学付属かえで幼稚園は、地域に根差した幼稚園として、ほとんどの卒園児が地域の公立小学校に入学するという特徴を持つ。今回の発表では、入園前から不安の大きかったA子母子の1年間を振り返り、保護者(家庭)の平和を祈り支えることの意味を考察し、今後の課題について話した。

大漉氏が研究の概要を説明し、直接現場でA子母子と接する永瀬氏が、A子母子に実践してきたことを語った。日常での母親への声掛け、傾聴、注意を伝えるときのタイミングなど、どの保護者にも行っていることを、より一層祈りを込めて行うことを心掛けたという。

それにより、母親が保育者に心を開き、母親同士の関わりも生まれ、表情も明るくなったという。また、A子も母親の変化に伴い、同園での生活を楽しむようになったことを報告した。

毎月1回同園が開く、子育てについて語り合う会「カフェ『ぶどうの木』」が大きな役割を果たしたことも伝えた。母親はこの会に毎回参加し、他の母親たちの話を聞くだけでなく、自分の思いも語っていたという。

1年が終わる頃には、「キリスト教はここで初めて出会い、まだよく分からないが、目に見えない大きな力に支えられていることを知ることができてうれしい」と話したという。

話を聞き、思いを受け止め、共に聖書を読み、祈ることが、母親の気持ちを安定させる助けになっていたという。永瀬氏は、「キリスト教保育者はイエス・キリストにより頼みながら、隣人として保護者を愛し、心の平安と、孤立しない子育てのための支えに務める」とキリスト教保育者のあるべき姿を語った。

最後に永瀬氏は、「ほとんどの母親が、子どもといることを心の底から幸せに感じている。でもその一方で、深い悩みを持ち、不安に陥っている母親もいて、子どもはその不安に影響されてしまう」と話し、「平和とは、子どもが夢中に遊んでいること。そのために私たちは、保護者と子どもの隣人になって平和を祈り、平和をつくることが求められている」と締めくくった。

4人の報告の後、司会の甲斐氏がそれぞれの発表についてコメントし、「一緒に働いている保育者同士がどのように成長していくかが共通課題」と述べた。会場からは、キリスト教教育のテキストの在り方や、劇をもっと活用するためのヒント、保護者に学びの場をどう提供できるか、父親との関わり方などに関する質問や意見が飛び出し、活発な議論が行われた。

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