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【書評】榎本和子著『ちいろばの女房』 ちいろば牧師の妻、90歳にして初めての自伝

2016年3月4日13時55分 記者 : 新庄れい麻 印刷
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+【書評】榎本和子著『ちいろばの女房』
榎本和子著『ちいろばの女房』
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榎本保郎牧師の自伝『ちいろば』も、三浦綾子による『ちいろば先生物語』も、初めて手にした時は小学生だったにもかかわらず、その幼心に大きな衝撃を受けたのを覚えている。自分が生まれる20年も前に召天していた「ちいろば牧師」は、聖書の登場人物と同じように、自分の手には届かないような偉大な信仰者に思えたものだった。そんな榎本牧師を誰よりもよく知っている、妻・和子さんによる初の自伝『ちいろばの女房』が、2月1日、いのちのことば社から出版された。結婚、教会開拓、保育園経営、アシュラム運動との出会い―榎本牧師の手によって『ちいろば』に記されていたさまざまなエピソードが、今初めて和子さんの口を通して語られる。

こんな人と結婚するのは大変だな。本書を読んだ一番の感想だ。「あんなに火の玉のように燃えていては、本人も周りも難儀やな。和子、もう一度考え直してみるか」。和子さん自身も、結婚直前に父親からそう言われたそうだ。果たしてその言葉の通り、無茶苦茶なほどに信仰にまっすぐだった榎本牧師の生き方は、遠目からは「偉大な信仰者」として見えたとしても、近くにいる者からすれば前途多難、不安だらけ、悲しみの涙がつきもの・・・だったというのだから、自分だったらちょっと勘弁かな、と苦笑いしながら本を閉じてしまいたくなる。

だが、本書は『ちいろば』の派生作品ではなく、ちいろば牧師の妻である和子さんの信仰の証しだ。瀬戸内海淡路島のクリスチャンホームに生まれ、家族全員にかわいがられて育った一人の少女が、榎本保郎という一人の青年と結婚し、まるでジェットコースターのような人生を送っていく。喜びの日だけでなく、苦しみの日、途方にくれる日々が長く続くこともあった。

そんな時、どんな時にもそばにあった聖書の言葉を通して、神が和子さんに何を語ったのか。本書は、榎本牧師のように熱く信仰に燃えた「偉大な信仰者」になるようにと励ますのではなく、むしろ、自分は自分らしく「ちいろば」として神の役に立つ生き方をしていけばいいと、優しく読者の背中を押してくれる1冊だ。

榎本牧師は1977年、52歳という若さで天に帰った。彼が“命をかけて”取り組んだ、聖書の言葉への徹底した服従を実践するキリスト教超教派の祈りの霊性運動「アシュラム」は、榎本和子さん、田中恒夫牧師、息子の榎本恵牧師、そして多くの信仰の同士の手によって続けられている。今年、1月21日から23日にかけては、毎年恒例となっている「年頭アシュラム」の第41回目が行われたが、そこでは、和子さんと編集者の対談形式による本書の出版記念会も開催された。昨年10月に90歳を迎えた和子さんは、溢れるばかりの笑顔で「今が一番幸せ」と話していたという。

『ちいろばの女房』:榎本和子、いのちのことば社、2016年2月1日、定価1200円(税抜)

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